筋膜は全身に存在し、筋肉・関節・軟部組織・内蔵とあらゆる組織に存在しています。 それらの筋膜は一定のラインで連結されていると考えられています。 このラインは、別名「アナトミートレイン」と呼ばれています。 このアナトミートレインのつながりの中の一部が不調であれば、連動して不調になっていきます。

身体にある筋膜のラインは12本確認されています。

① スーパーフィシャルフロントライン

② スーパーフィシャルバックライン

③ ラテラルライン（各2本）

④ スパイラルライン

⑤ スーパーフィシャルフロントアームライン

⑥ ディープフロントアームライン

⑦ スーパーフィシャルバックアームライン

⑧ ディープバックアームライン

⑨ フロントファンクショナルライン

⑩ バックファンクショナルライン

⑪ ディープフロントライン

例えば、腰痛に関連する筋膜のラインは、「スーパーフィシャルバックライン」、「ディープフロントライン」と「ラテラルライン」と言われています。

• ●スーパーフィシャル・バック・ライン：
• 足裏から始まり、臀部、背筋、頭頂、眉まで身体の後面全体を覆っている筋膜のラインです。身体を前方へ折れ曲がることを防ぎ、直立した姿勢を保つ働きをしています。

●ディープフロントライン：

足底部から顎まで縦に走るラインで、身体内部の固定や姿勢維持、呼吸のリズムと歩くリズムをつなげる役割があります。

●ラテラルルライン：

体の側面を走る筋膜のラインで、頭から足底まで伸びています。左右のラテラルラインが協調的に下肢から体幹、頸部を固定することで、歩行などの粗大動作や上肢の機能を安定させています。

腰痛に関連するラインに不調があればより腰痛を発生しやすい原因となっています。 したがって、これらのライン上の筋筋膜の不調をとりのぞいてやることで、筋筋膜性腰痛などに効果がある可能性があります。

当院でも、全身調整で、足のツボへの鍼を行うことで、頭部の食いしばり(咬筋筋肉)が解消されるケースが散見されます。

一つの考え方として、スーパーフィシャル・バック・ライン、ラテラルラインの末端への鍼の刺激により、全体調整がおこなわれた結果と捉えることができます。

人体には、「テンセグリティ構造」という考え方があり、全体に存在する張力が等しいバランスでとれていることを指します(橋などの柱とケーブルが張っているようにバランスしているイメージ)。

鍼による刺激が、アナトミー・トレイン上の筋膜に覆われている筋を調整して各張力を調整したと考えます。 こういった、痛みのある局所だけではなく、その前後のラインをみつめることで不調が改善されるケースもみられるので、全体施術という考え方が重要と考えています。